親からの生前贈与を利用して住宅購入する際の非課税措置とは?要件や手続き、注意点について解説
今回の記事では、生前贈与に合わせて住宅購入をする際の非課税措置について解説します。2024年度の税制改正により、この非課税措置は2026年末まで...
実家などの不動産が遺産として遺された場合、相続人が複数いるとトラブルの原因になりやすいので注意が必要です。不動産は、預貯金や現金のように1円単位で分割できません。また、不動産の評価方法や分割方法にはいくつかの種類があり、相続人たちの意見が対立することも少なくありません。
今回は、不動産に関する4つの対処方法(3つの分割方法と共有にする方法)について解説します。
目次
遺産相続の際、相続人たちは話し合いによって遺産の具体的な分け方を決定する必要があります。これを遺産分割協議と呼びます。現金や預貯金であれば、1円単位で法定相続分に従って分けることができますが、不動産はそう簡単にはいきません。
不動産は唯一無二の財産であり、現金のように細かく分割することはできないからです。このことは、不動産だけでなく、株式、絵画、骨董品、宝石などの動産類にも当てはまります。
遺産の中に不動産や株式、動産類のような「細かく分割できない財産」が含まれている場合、以下の4つの方法から選択します。
それぞれの方法について詳しく見ていきましょう。
現物分割とは、不動産などの遺産をそのままの形で相続する方法です。たとえば、土地や建物を長男など特定の相続人が一人で相続したり、土地を法定相続割合に従って「分筆」し、各相続人が取得する方法があります。分筆とは、一つの土地をいくつかに分けて、それぞれを別の不動産として登記することを指します。ただし、分筆できるのは土地のみで、建物の分筆はできません。また、条例などで分筆が禁止されている地域もあります。
現物分割は相続手続きが簡単になるメリットがありますが、相続人間で不公平が生じやすい点が課題です。特定の相続人が不動産を独り占めすると、他の相続人の不満が生じ、遺産分割協議がまとまらなくなる可能性があります。
2つ目の遺産分割の方法は「代償分割」です。これは、不動産などの財産を一人の相続人が取得し、他の相続人に法定相続割合に応じた代償金を支払う方法です。例えば、3,000万円の価値がある不動産を3人の子どもが相続する場合、長男が不動産を相続し、兄弟2人にそれぞれ1,000万円ずつの代償金を支払って解決します。
代償分割は現物分割と異なり、代償金が支払われるため他の相続人からの不満が少ないです。また、分筆できない土地や建物でも公平に分割できるメリットがあります。しかし、代償分割を行うには、不動産の「評価」が必要です。不動産には定価がなく、評価方法にもいくつか種類があるため、相続人たちがどの評価方法を適用するかで揉めることがあります。また、不動産を取得する相続人に代償金の支払い能力がない場合、利用できません。
代償金の支払いが贈与と見なされると、贈与税が課税される可能性があります。贈与税は高額です。そのため、代償金の支払いが不動産取得の対価であることを、遺産分割協議書に明確に記載しておく必要があります。
(遺産分割協議書の記載例)
相続人◎◎は、第○項に記載の遺産を取得する代償として、相続人△△に対し、平成◆◆年◆月◆日までに金2,000万円を、△△が指定する銀行口座に送金して支払う。送金手数料は◎◎の負担とする。
この事例では、自宅の土地建物の価額が4,000万円とされていますが、どのように決定するかが問題になることがあります。例えば、3,000万円とされた場合、長男は次男に1,500万円の代償金を支払えば良いことになります。一方で、価額が5,000万円なら、2,500万円を支払わなければなりません。
つまり、不動産の価額を低く見積もれば長男に有利になり、高く見積もれば次男に有利になります。価額は通常、遺産分割時の「取引価格」、つまり実際の売却価格を参考に決めます。他にも、国税庁が定める「路線価」や、税理士が作成する相続税申告の「明細書」に記載された評価額を参考にすることもありますが、相続人間で同意できるのであれば、どれを参考にしても構いません。
価格決定の際、最も多いのは不動産業者に見積もってもらう方法ですが、各相続人が別々の業者に見積もりを依頼すると、揉め事の原因になることもあります。できれば中立な立場の第三者を交えて、価格を決定するのが理想です。
個人的には、不動産鑑定士による鑑定が最も公正だと思いますが、依頼には少なくとも30万円程度の費用がかかりますので、気軽には依頼しづらいですね。
換価分割は、不動産を売却し、その売却金を相続人で分け合う方法です。相続人たちが協力して不動産を売り、諸経費を差し引いた後、残った金額を法定相続割合に応じて分配します。
例えば、3,000万円の不動産が売れ、諸経費が300万円かかった場合、残りの2,700万円を3人の子どもがそれぞれ900万円ずつ受け取ります。換価分割では、不動産を売却するため評価の必要がなく、評価方法で揉めるリスクはありません。ただし、売却を急ぐと安値になる可能性があり、諸経費を差し引かれるため手元に残る金額が予想より少なくなることもあります。また、親が残した不動産を失う寂しさもあるでしょう。
換価分割の場合の注意点は、遺産分割協議書に、売却し代金を分けることを明確に記載することです。
また、相続不動産を売却して代金を分ける際は、売却の前提として、必ず亡くなった方から相続人への名義変更(相続登記)が必要です。
相続登記では、原則として、売却代金の分け方に応じた持ち分で相続人全員の共有名義にする必要があります。
(例えば、長男と次男で売却代金を半分ずつ分け合う場合、不動産の共有持ち分も2分の1ずつに登記するべきです。)
一方で、後の売却の手間を省くために、相続人代表者の単独名義に相続登記をすることもあります。この場合、売却後に相続人代表から他の相続人に売却代金を分配することになりますが、これが贈与とみなされると贈与税が課税される恐れがあるため、注意が必要です。
具体的には、遺産分割協議書への記載方法が重要になります。実際には売却代金を相続人同士で分けるのに、売却の手間を省く目的で便宜上相続人代表者の単独名義に相続登記することは、原則として認められません。
相続人代表の単独名義に相続登記をし、かつ売却代金の分配が贈与とみなされないように、遺産分割協議書を作成する必要があります。
(遺産分割協議書の記載例)
1.相続人◎◎は、以下の遺産を取得する。
不動産の表示(省略)
2.相続人◎◎は、前項の不動産を売却し、売却代金から売却に関するすべての費用(不動産仲介手数料、不動産登記費用、譲渡所得税等)および、売却完了までに要する費用(管理費用、固定資産税、都市計画税等)を控除した残額を、法定相続割合に従って各相続人に分配する。
上記はあくまで一例ですので、実際に遺産分割協議書を作成する際は、状況に応じて慎重に作成する必要があります。場合によっては、遺産分割協議をまとめる前に、相続登記を管轄する法務局や税務署に相談することも検討すべきです。
共有は、不動産を「分けない方法」です。相続人たちが不動産の分け方を決められない場合や、話し合いができない場合に「とりあえずそのままにする」のが共有です。共有とは、不動産を複数の人が共同所有することです。相続した不動産を共有する場合、法定相続人が法定相続割合に応じた「共有持分」を取得し、そのまま全員で共有状態にします。
ただし、共有状態の不動産は、1人1人の共有持分権者が自由に管理処分できません。例えば「賃貸に出して活用したい」「リフォームしたい」と考えても、他の共有持分権者の同意がないと自由に動けません。活用が難しいため放置状態になり、固定資産税だけがかかる場合もあります。売却したいと思っても、「共有持分権者全員の合意」が必要です。共有持分権者が死亡し再度の相続が発生した際には、共有持分が細分化されて「誰が権利者かわからない状態」になることもあります。
このような問題があるため、相続不動産を共有のままにすることはお勧めできません。不動産を相続したら、現物分割、換価分割、代償分割のいずれかの方法で分けるべきです。
ここでは、遺産分割前の不動産売却のための相続登記が相続人の一人から単独で申請できることについて解説します。
不動産の登記申請は、通常、売主と買主の両者が共同で行います。しかし、相続登記においては、法定相続分に基づく場合、相続人の一人からの単独申請が例外的に認められています。これは、法定相続分による相続登記が共有財産の保存行為に該当するためです。
ただし、この場合でも自分の持ち分だけでなく、相続人全員の持ち分を登記しなければなりません。
相続財産である不動産を売却し、その代金を法定相続分どおりに分配したい場合、法定相続分での相続登記は、遺産分割協議による相続登記と比べて必要書類が少なくて済みます。
不動産の所在地を管轄する法務局に申請する必要があるため、近隣に住む相続人が単独で申請すれば手続きがスムーズに進みます。
例えば、A、B、Cの3兄弟が相続人で、Aが被相続人の自宅の近くに住んでいる場合、BとCが遠方にいると、書類の収集や登記申請書の作成が困難ですが、Aが単独で申請すれば手間や時間を省けます。
現在は郵送申請が可能ですが、法務局から補正の連絡があった場合、近くに住む相続人が対応するのが便利です。
法定相続分による相続登記の単独申請にはいくつかのデメリットがあります。
登記完了後に通知される登記識別情報が申請者にのみ発行されます。これは不動産の売却時に必要な重要な書類であり、この書類がないBとCは持ち分を売却する際に手続きが面倒になります。
登記時には、相続人全員の持分の登録免許税を申請者が負担します。他の相続人に頼まれて単独申請する場合、あらかじめ登録免許税の負担割合について話し合うことが重要です。
他の相続人が売却の意思を翻し、「売却しても得られる金額が少ないなら、不動産を相続したくない」と考え相続放棄をする可能性もあります。相続登記後に相続放棄をすると、更正登記が必要になるため手間がかかります。
相続人全員が不動産売却に積極的で、確実に手続きを進められる状況でない限り、法定相続分による相続登記の単独申請は慎重に進めるべきです。
ここでは、遺産分割前に相続財産である不動産を売却する際の注意点について解説します。
相続財産である不動産を売却した後に被相続人の遺言書が見つかっても、購入者がすでに所有権移転登記をしていれば、不動産は取り戻せません。
法定相続分による相続登記は単独申請が認められる場合がありますが、登記識別情報は申請者にのみ発行されます。他の相続人が自分の持ち分を売却するには、以下の手続きを経なければ所有権移転登記ができません。
これらの手間が増えることで、相続人間でトラブルが生じる可能性があります。
相続財産である不動産を法定相続分どおりに共有名義にした場合、各相続人は自己の持ち分を自由に売却できますが、トラブルが起こる可能性があります。
例えば、不動産を相続人A、B、Cの共有名義にし、Cが自身の持ち分3分の1を第三者Xに売却し、Xが所有権移転登記をしたとします。その後、遺産分割協議で相続人Aが不動産の全部を単独で相続することになった場合、CがXに売却した持ち分について、Xはすでに所有権移転登記をしているため、AはXに対抗できません。
持分の買い取りを扱う不動産業者の中には、持ち分を買い取った後、他の共有者に使用料の支払いや持ち分の買い取りを求めて交渉することもあります。
最悪の場合、共有物分割訴訟を提起され、他の共有者も不動産を手放さざるを得なくなる可能性があるため慎重に進めましょう。
不動産の遺産分割では、上記のリスクを理解した上で、できるだけ自分たちの話し合いで決定するようにしましょう。
しかし、大金の掛かる話にもなるため、合理的な会話にするために第三者を介入させることも手段の一つとしては良いでしょう。
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