売却してからもそこに住み続けるリースバック契約、そのメリット・デメリットとは?

リースバックという契約を皆さんはご存じでしょうか。

住宅におけるリースバック契約とは、住宅を売却して現金を得て、売却後は毎月買主兼貸主に賃料を支払うことで、住んでいた住宅に引き続き住み続けるというサービスです。

リースバックを利用の検討の際には、他の手法との比較も必要となり、自身のニーズと合致しているかどうかをよく確認しましょう。

また、リースバックにおいては、売買契約と賃貸借契約を同時に締結することになりますが、その際の契約条件を確認しないと最悪の場合短期で追い出されてしまう可能性もあります。

今回の記事では以下のような流れに沿ってリースバック契約について解説していきます。

  • リースバック契約とは
  • リースバック契約のメリット・デメリット
  • リースバック契約に向いている人
  • リバースモーゲージ契約との違いとは

ここからはそれぞれについて解説していきます。

リースバック契約の概要

リースバック契約契約とは、貸し出すという意味の「Lease(リース)」と戻すという意味の「Back(バック)」を組み合わせた造語です。

契約の内容としては、冒頭でも説明した通り、住宅を売却して現金を得て、売却後は毎月買主兼貸主に賃料を支払うことで、住んでいた住宅に引き続き住み続けるというサービスです。

参照:国土交通省 住宅のリースバックに関するガイドブック

リースバックは不動産を利用した老後資金の調達方法の一つであり、主に高齢者の方に多く利用されています。

契約の流れ

契約の流れについて以下の流れに沿って行われます。

  • 問い合わせ・簡易査定
  • 現地調査
  • 契約条件の提示・契約締結
  • 売買代金の受取・賃貸開始

ここからはそれぞれについて解説していきます。

問い合わせ・簡易査定

まず最初に電話やウェブにてリースバック業者に問い合わせを行い、簡易査定を依頼します。

この際、一般の売買業者ではなくリースバック専門業者であることを確認しましょう。

簡易査定は無料で行われます。

また、簡易査定は机上査定とも呼ばれ、実際の不動産を見ることなく、住所や間取り等の物件情報から算出される目安としての金額のため、実際の買取金額は現地調査後に決まることを理解しておきましょう。

現地調査

次に、現地調査を行います。

現地調査では専門の調査員が実際の不動産を見学して査定を行います。

この時、他の不動産買取の場合には部屋をきれいにしておいたりする必要がありますが、リースバックの場合には基本的にその家に住み続けることになるので、室内の細やかな清掃などはそこまで重要ではありません。

一方で、建物の外観や外構部分等についてはきちんと手入れがなされていることは査定対象と成るので、その点を意識しておくと良いでしょう。

契約条件の提示・契約締結

その後、最低に応じた売買価格と家賃などの賃貸借契約の条件が提示されます。

ここで締結する契約は「不動産売買契約」と「賃貸借契約」となります。

それぞれの種類については次のパートで細かく説明いたします。

また、所有している不動産に住宅ローンが残っている場合には、抵当権を外す必要があるので、その点に注意しておきましょう。

売買代金の受取・賃貸開始

先ほどの、不動産売買契約と賃貸借契約が締結されると、売買代金が振り込まれ同時に賃貸借の契約が始まります。

この際、受け取った売買代金の使途(使い道)については一切の制限が無いことが特徴です。

ただし、今後、家賃を払い続ける必要がある点に注意しておきましょう。

契約の種類

ここからは、リースバックの際に締結する契約について解説していきます。

大きく契約は2つの契約を締結します。

・不動産売買契約
・不動産賃貸借契約

ここからはそれぞれについて解説していきます。

不動産売買契約

不動産売買契約に関しては、リースバック契約の時も通常の売買契約の時も大きな違いはありません。

しいて言うと、条文の中に「別途賃貸借契約を締結するものとする」等の条文が入る場合がありますが、こちらについては特別なことは特に無いと言えるでしょう。

不動産賃貸借契約

リースバック契約における最大の注意点はこの不動産賃貸借契約にあると言えます。

特に不動産賃貸借契約については、以下の2つの契約に分類されそれぞれ特徴があります。

項目普通借家契約定期借家契約
契約方法書面でも口頭でも良い書面のみ有効かつ、貸主には「更新がなく、期間満了とともに契約が終了すること」を契約書とは別に書面にて交付する必要あり
契約期間1年以上かりに1年未満だった場合は期限の定めのない契約となる制限なし
契約更新の有無更新が可能更新は基本出来ないただし、貸主・借主の双方が合意した場合に限り、新たに契約を結ぶことが出来る
貸主からの中途解約基本的にはできない中途解約や更新拒絶には正当事由が必要特約にて中途解約条件を付けることは可能
借主からの中途解約特約にて中途解約条件を付けることは可能床面積が200㎡未満かつ、やむを得ない条件がある場合に解約申請が可能
賃料定期借家契約と比較すると高い傾向にある普通借家契約と比較すると安い傾向にある

ここで、最も注目すべきポイントは、契約期間と契約更新の有無という点です。

ここでリースバック業者がどんなことを考えているか考えてみましょう。

リースバック業者としては購入した物件で利益を出さなければなりません。

その方法としては以下の2つの方法があります。

  • 賃貸事業:購入した物件を貸し出して賃貸収入を得る
  • 開発事業:購入した物件を売却若しくは解体・更地にして新たな開発を行う

この時、どのリースバック業者も2つの方法を合わせた利益を想定して購入します。

更に、利益として規模が大きい手段としては後者の開発事業となるのでリースバック業者としては早く出て行って欲しいのが本音です。

そのため、リースバック業者としては上記の契約のうち定期借家契約かつ契約期間も短期の契約をおすすめしてきます。

その際に考えなくてはいけないことは、どれだけこの物件に長く住み続けるかという事です。

諸事情により金銭が必要となり、リースバックするという手段自体は一般的ですが、その物件にこれから何年間住み続けるのかという将来予測は非常に難しいものです。

例えば、5年後に老人ホームに入るという前提だったとしても、5年後にはまだピンピンしていて入るのがもったいないと感じることもあるでしょう。

普通借家契約の場合には契約更新は借主都合で調整できますが、定期借家契約の場合には貸主との再契約が必要になります。

この際、再契約が出来るという甘い誘い文句でそそのかされてしまいそうですが、再契約の時の契約条件が同じとは限りません。

賃料が倍になったり契約期間が短くなったり更新料を要求されたりすることもあります。

なぜなら、リースバック業者が早く追い出して開発事業を行いたいですし、契約更新をする義理が無いからです。

ここまで少し厳しい言い回しが多かったですが、定期借家契約が必ずしも悪いわけではなく、賃料が安い等のメリットもあります。

最終的な判断は売主兼借主の方になりますが、それぞれのメリット・デメリットを理解した上で判断すると良いでしょう。

ビジネスの世界でも頻繁に起こっている

そして、このリースバックについてですが、実はビジネスの世界では頻繁に起こっている事なのです。

有名どころでは、2020年に大手広告会社の株式会社電通グループや大手芸能プロダクションのエイベックス株式会社がそれぞれ本社ビルを売却してリースバックしています。

参照:株式会社電通グループ 固定資産(電通本社ビル)の譲渡および賃借ならびに譲渡益の計上見込みに関するお知ら

参照:エイベックス株式会社 固定資産の譲渡及び特別利益の計上に関するお知らせ

それぞれ、890億円と290億円という譲渡益が出ていることから、家庭内での現金化の施策と同じように、会社としての運営の中で下された判断ということも理解できるかと思います。

リースバック契約のメリット・デメリット

ここからはリースバック契約のメリット・デメリットについてそれぞれ解説していきます。

メリット

リースバック契約のメリットは以下の3点が挙げられます。

  • まとまった老後資金が手に入り、更にそのまま住み続けることが可能
  • 固定資産税などの維持費が不要となる
  • 引っ越しなどの手続きが一切不要

まとまった老後資金が手に入り、更にそのまま住み続けることが可能

まとまったお金が必要となった場合に家を売却することは一つの手段ですが、そのまま長年住み慣れた自宅に住み続けられることが最大のメリットと言えるでしょう。

住宅であれば戸建て・マンションを問わず利用できることと、近所の人にも知られる心配もないため、スムーズな手続きが可能です。

固定資産税などの維持費が不要となる

所有者がリースバック業者となるため、固定資産税や都市計画税などの税金関係の支払いの必要が無くなります。

マンションの場合は管理費や修繕積立金の支払いも無くなります。

また、戸建ての場合においても賃貸借の条件次第では雨漏り等の修繕費の負担も無くなります。

引っ越しなどの手続きが一切不要

リースバックでは引っ越しなどの手続きが無いこともメリットの一つといえるでしょう。

売却する場合は新しい家を探すほかにも、引っ越し、住民票の移転などの雑務がありますが、リースバックでは全て不要でそのまま住み続けられます。

デメリット

一方、デメリットについては以下の3点が挙げられます。

  • 売却価格が市場価格よりも安くなる
  • リフォームが自由に出来なくなる
  • 家賃が高い

ここからはそれぞれについて解説していきます。

売却価格が市場価格よりも安くなる

リースバックの場合、売却価格は市場価格より安くなる傾向にあり、およそ1割~3割程度安い価格で売買されています。

理由としては、リースバック業者がすぐに開発できない点など一般の不動産に比べて制限が非常に多い点が挙げられます。

リフォームが自由に出来なくなる

次にリフォームについての制限です。

持家の頃には、自分のタイミングで自由にリフォームや建て替えが実行できますが、リースバックを行うと所有者はリースバック業者となるため、リフォームにおいてもリースバック業者の許可が必要となります。

家賃が高い

リースバックの物件は家賃が高くなる傾向にあります。

理由としては、貸主側としては借主が限定されており、価格の競争が出来ないことから、初期段階で賃料の設定の際に市場価格より高い金額で契約を結ぶためです。

相場との比較は一概にいうことはできませんが、2〜5割程度高くなる傾向にあると考えられるでしょう。

リバースモーゲージ契約との違いとは

リースバック契約に似た契約形態の中で、リバースモーゲージ契約があります。

ここでは、リースバック契約とリバースモーゲージ契約の違いについて解説していきます。

リバースモーゲージの概要

リバースモーゲージとは、借り手(高齢者)が自らの持家に継続居住しながら、その住宅を担保として生活資金を借り入れ、死亡時にその住居を売却することにより借入金を精算する制度です。

参照:国土交通省 リバースモーゲージとは

リースバック契約との比較

リースバック契約とリバースモーゲージ契約の概要の比較は以下の通りとなります。

項目リースバックリバースモーゲージ
仕組み不動産を売却し、その後賃借する不動産を担保に、年金の形で受け取る
借入の有無なしあり
所有権移転するしない
担保の設定不要必要
ポイント・売却して賃借に切り替える
・適用条件に幅があり、利用しやすい
・最終的には売却を前提としている
・条件が厳しく活用しにくい

また、リースバック契約とリバースモーゲージ契約のメリットデメリットの比較は以下の通りとなります。

項目リースバックリバースモーゲージ
メリット・まとまった老後資金が手に入り、更にそのまま住み続けることが可能
・固定資産税などの維持費が不要となる
・引っ越しなどの手続きが一切不要
・自宅を担保に融資が受けられる
・毎月の返済は利息のみ
・極度額まで何度でも借入可
デメリット・売却価格が市場価格よりも安くなる
・リフォームが自由に出来なくなる
・家賃が高い
・年齢、所得の制限あり
・不動産評価額の変動リスク
・事業資金等の資金用途の制限あり
・相続人の同意が必要
・資産評価額に対する融資枠が小さい
・適用できる地域や建物種類に制限が多い

まとめ

いかがでしたでしょうか。

今回は、リースバック契約について細かく解説していきました。

リースバック契約では、住みながら資金を捻出する方法の一つとしてメリットも多い一方で、所有権が無くなってしまうことや、売却金額やその後の家賃の支払いや期間など、多くの検討事項が多いことも事実です。

株式会社JR西日本イノベーションズが運営する「このび」は不動産の買取再販サービスです。

リースバックやリバースモーゲージといった複雑な契約ではなく、買取業者として自宅の買取に特化しており、売却のタイミングで別の場所に移り住むという選択の場合には仲介より早く売却が出来るというメリットも多くあります。

自宅の売却に関する相談がありましたら、どうぞお気軽にご相談ください。

本記事の監修

戸建買取再販事業部 事業部長福田岳司

JR西日本に入社後、大阪駅での駅員を経て百貨店に出向し商売の基本と接客を学ぶ。その後三ノ宮駅の駅ビル開発計画推進を通じて不動産とまちづくりに従事。一度は海外で働きたいという想いからシンガポールに赴任。東南アジア各国で外国人向けJR西日本パスの販売を促進。現地法に基づく組織運営を学ぶ。帰国後はJR西日本イノベーションズ(現在)にて香港企業への出資や新規事業創出を担当。新規事業の第1号案件である「このび」を立上げたうえで事業統括・推進。自分も中古住宅をリノベーションした家に住む。
「このび」を通じてお客様に豊かな生活をコスパ良く提供したいと考えている。子育て真っ盛りの2児の父。趣味は演劇。

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