生前に実家を仲介経由で売却する場合の流れとポイントを解説

今回は実家の売却について解説していきます。

実家には良い思い出も悪い思い出も残っていて、売却することは心苦しい決断です。

一方で、相続を想定した際に、相続人に別の家がある場合には空き家にしておくことも出来ないし、賃貸に貸し出しが出来れば良いですが、生活感が満載な実家は一定の改修を行わないと貸し出すことも出来ないでしょう。

今回の記事では、所有者が生前に実家を売却する場合について、以下の流れに沿って解説していきます。

  • 生前に実家を売却するのはどんな場合?
  • 仲介経由で売却する場合

ここからは個別に解説していきます。

生前に実家を売却するのはどんな場合?

昨今話題になっている「老後2000万円問題」をご存知でしょうか。

2019年に金融庁の金融審議会市場ワーキンググループの報告書「高齢社会における資産形成・管理」において報告された内容がきっかけとなり一気に注目を集めました。

簡単に説明すると、日本人の平均的な老後の生活を調査した中で年金などの収入と日々の生活費としての支出を比較すると毎月約5万円の不足が発生してしまうことから、20年で約1300万円、30年で約2000万円の貯金の取り崩しが必要となるという意味です。

参照:総務省統計局 家計調査年報(家計収支編)平成29年(2017年) 家計の概要

高齢になると取り組める仕事も限られており、貯蓄だけではやりくりにも限界があるため、一定の方々が生前に実家を売却して、老人ホームなどに入居するための費用として、生前に実家を売却する場合があります。

そして売却には以下の2つの方法があります。

  • 仲介経由で第三者に売却する場合
  • 買取業者に売却する場合

実際の売却の流れとそれぞれに掛かるおおよその期間は以下の通りとなります。

売却の手順仲介経由で売却する場合買取業者に売却する場合
相場を調べる約1週間約1週間
価格査定を行う約1~2週間約1~2週間
媒介契約の締結する約1週間なし
売却活動を始める約1~2カ月なし
売買契約を締結する約2週間~1カ月約2週間~1カ月
決済・引き渡し約2週間~1カ月約2週間~1カ月

ここからは仲介で売却する場合と買取業者に売却する場合をそれぞれ個別に解説していきます。

仲介経由で売却する場合

相場を調べる

家を売却する上で最初に行うことは売却価格を調べることです。

家を購入する際には他と比較するために多くの物件を見て来たかと思いますが、売却する場合にも同様で、相場を調べることがとても重要になります。

実際の売却では、仲介会社を経由して売却する場合や買取業者に売却する場合がありますが、適性価格を理解していないと市場とか入りした高い価格にこだわりすぎて売却に必要以上の時間が掛かりすぎることがあります。

相場を調べることで売却価格と短期間での売却に繋がっていきます。

ここでは、一般の方でも調べられる2つのサイトを紹介いたします。

相場調査方法その① レインズマーケットインフォメーション

こちらのサイトは、国土交通大臣指定の不動産流通機構が運営・管理しています。

参照:レインズマーケットインフォメーション

相場調査方法その② 土地総合情報システム

こちらのサイトは、国土交通省が運営・管理しています。

参照:土地総合情報システム 不動産取引価格情報検索

2つのサイトはどちらも実際に売却した価格を見ることが出来るので、近隣物件や築年数が近い物件がどの水準で売却されているかを理解しておきましょう。

査定依頼

次に不動産会社へ査定の依頼を行います。不動産査定には2つの方法があります。

机上査定(簡易)訪問査定(詳細)
査定方法所在地・築年・敷地、建物面積等のデータから算出上記のデータに加えて、実際の物件を見て算出
物件見学なしあり
メリット数日で分かる実際の売却価格に近く、アドバイスを受けることが出来る
デメリット概算となり、実際の売却価格は下がる傾向にある訪問対応が必要で、時間が掛かる

机上査定では複数の会社にオンラインでヒアリングが可能である点や実際の対面がないことが特徴です。

詳細査定では実際に現地に来て物件を調査するため、データでは見えない部分の劣化を価格を査定金額に折り込むことが出来ることが特徴です。

時間に余裕がある場合は、簡易査定を複数の会社に出して、その中で金額が高い会社に訪問査定を依頼することが良いでしょう。

時間に余裕がない場合は、後々の減額を盛り込みブレがないように、信頼できると思われる会社に訪問査定を依頼することが良いでしょう。

媒介契約の締結

次に不動産会社と媒介契約を締結いたします。媒介契約は大きく分けて3つの方法があります。

  • 専属専任媒介契約
  • 専任媒介契約
  • 一般媒介契約

それぞれの特徴は以下の通りとなります。

専属専任媒介契約専任媒介契約一般媒介契約
自分で買主を見つけられるか出来ない出来る出来る
依頼できる会社の数1社のみ1社のみ複数社に依頼可能
依頼主への報告1回/1週間以上1回/2週間以上なし
指定流通機構への登録義務あり義務あり義務なし

次にそれぞれのメリットデメリットは以下の通りとなります。

メリットデメリット
専属専任媒介契約・積極的な販売が期待できる
・報告頻度が一番多いため状況把握が容易に出来る
・仲介手数料の値引きに応じやすい
・1社のみの力量に左右される
・売主が自分で買主を見つけることが出来ない
専任媒介契約・比較的積極的な販売が期待できる
・報告義務があり状況把握も出来る
・1社のみの力量に左右される
・売主が自分で買主を見つけることも出来るが、媒介契約履行費用は発生する
一般媒介契約・複数の会社に依頼できる
・購入希望者を早く集めやすい
・売却の保証がなく、積極的な販売を期待できない
・仲介手数料を値引きしづらい

媒介契約については、上記の特徴やメリット・デメリットを踏まえて、それぞれ不動産会社にヒアリングを行い、決定することが良いでしょう。

売却活動

次に売却活動を行います。売却活動では大きく以下のような流れに沿って行います。

  • 境界線確認を行う
  • 広告を出す
  • 内覧に向けて家を整理する
  • 内覧当日の対応

ここからは個別に解説していきます。

境界線確認

境界線の確認とは、土地面積を測量し、隣地の所有者から書面に捺印してもらった上で登記を行うことです。

住宅地では建物が密集しているため、境界線があいまいな部分が多々あります。

特に古い家の場合には境界線が不明瞭な場合が多いでしょう。

隣地とのトラブルを避けるためにも、事前に境界線確認が取れていると、買主としても安心して購入を検討できることになるでしょう。

広告を出す

媒介契約を通じてインターネット上や店頭に広告を掲載していきます。

この際、近隣の人に知られたくないなどの事情がある場合には不動産会社に相談することが良いでしょう。

その場合、店頭掲載を控えたり、チラシ広告を対象エリアに出さない等の配慮をしてもらえます。

内覧に向けて家を整理する

興味を持ってくれた人が内覧に訪れるので、家の整理を進めましょう。内覧での印象が、購入意思決定に大きな影響を与えます。

以下のデータは国土交通省による住宅市場動向調査報告書において、中古住宅にしなかった理由についてアンケートの結果です。

参照:国土交通省 令和3年度 住宅市場動向調査報告書

選択肢は複数ありますが、売却活動の中で売主として対応できる数少ない項目が、整理を行い、少しでも見た目などの不満を取り除くことだということが分かります。

買主への印象を少しでもよくするためにも、家の整理は積極的に行いましょう。

内覧当日の対応

内覧の調整が整ったら実際に内覧を行います。

内覧ではスリッパなどを用意したり、部屋の電気を全てつけておくなど、おもてなしの精神で迎え入れるように心掛けましょう。

また、不動産会社が積極的に営業をしてくれますが、買主は実際の生活においての感想を売主に聞いてくる場合があります。

その際には、隠し事をせずに正直に伝えるのが良いでしょう。

また、会話の中で地元のお役立ち情報等を提供すると心象が良くなるので、買主に合わせて適当な会話をすることもポイントアップの秘訣です。

売買契約

買主と売買条件に合意すると、実際に売買契約の締結を行います。

この場合、以下のポイントに沿って解説していきます。

  • 仲介手数料について
  • 契約不適合責任について
  • 瑕疵担保保険について

それぞれについて詳しく解説していきます。

仲介手数料について

仲介手数料については、宅地建物取引業法にて以下の通り上限が定められています。

不動産の売買価格(税抜)仲介手数料の上限
400万円を超える金額取引物件価格(税抜)×3%+6万円+消費税
200万円を超えて400万円以下の場合取引物件価格(税抜)×4%+2万円+消費税
200万円以下の場合取引物件価格(税抜)×5%+消費税
参考:昭和二十七年法律第百七十六号 宅地建物取引業法

※2024年7月1日の宅建業法の一部改正により、物件価格が800万円以下の低廉な空家等については、仲介手数料の上限が33万円(税込)となりました。
この場合、媒介契約の締結に際しあらかじめ、報酬額について宅建業者から説明を受け、合意する必要があります。

通常、実家の売却となるとほとんどの場合、売買金額は400万円以上となるので、売買代金の3%+6万円が仲介手数料となることを認識しておきましょう。

契約不適合責任について

契約不適合責任とは、不動産売買契約において、品質不良や品物違い、数量不足等の不備があった際に、売主が買主に対して負う責任のことを指します。

2020年に民法が改正されて、これまでよりも売主が負う責任が重くなりました。

これにより、売却に当たり物件に対する瑕疵(例:シロアリ被害や雨漏り等)については細心の注意を払って確認する必要が出てきました。

また、売却後であっても瑕疵が発覚した場合には、修繕や売買契約の解除等を行わなくてならないのです。

契約不適合責任のポイントは以下の通りとなります。

  • インスペクション(建物状況調査)を行ったうえで、住宅の瑕疵を明らかにする
  • 雨漏りやシロアリの被害、外壁ひび割れ等の瑕疵は事前に買主に伝える
  • 瑕疵を隠して売った場合でも、発覚した際には修繕や売買契約の解除が求められる
  • 売却後に売主がいつまで契約不適合責任を負う特約になっているかを明確にする

瑕疵担保保険について

先ほどの、契約不適合責任でのトラブルを防ぐための処置として、瑕疵担保保険というものが存在します。

瑕疵担保保険は、契約不適合責任での修繕費や調査費、工事中のカリスマ委への引っ越し費用の一部をカバーしてくれる保険となります。

保険業者は国土交通省が指定している住宅瑕疵担保責任保険法人となります。

参照:国土交通省 住宅瑕疵担保責任保険法人一覧

瑕疵担保保険のポイントは以下の通りとなります。

  • 住宅瑕疵担保責任保険法人の保険会社に加入する
  • 瑕疵の修繕費、調査費用、仮の住まいへの引っ越し費用の一部を負担してくれる
  • 支払われる保険金の上限額は2000万円(オプションで上限を引き上げることも可能)
  • インスペクション(建物状況調査)に合格する必要がある

物件引き渡しと決済

売買契約が締結されると物件の引き渡しへと進んでいきます。

引き渡しでは、事前に支払いを受けていた手付金以外の残金の入金と鍵の引き渡しを行います。

抵当権がついている物件においては、残金の入金をもって抵当権の抹消を行います。

この場合、司法書士が立ち会いを行い、引き渡し後に速やかに抵当権抹消、所有権移転登記、新たな抵当権設定の登記を行います。

確定申告

最後に確定申告を売買が成立した翌年に行います。

不動産の売却では、以下の式の中で譲渡所得がプラスの場合に、所得税が発生します。

譲渡所得 = 収入金額 ― (取得費+譲渡費用)― 特別控除額
参照:No.1440 譲渡所得(土地や建物を譲渡したとき)

譲渡所得とは上記の通りに計算されますが、取得費よりも売却した価格の方が3000万円も高いことはかなりまれで、3000万円の特別控除を適用するとほとんどの場合で税金を支払わずに住むことになります。

ただし、上記の3000万円の特別控除を適用するためには確定申告が必要となります。

ここまでは、生前に仲介経由で売却する場合の流れについて解説してきました。

基本的には実家に限らず不動産を仲介経由で売却する場合の流れなので、実家だからという点は大きく変わらないのです。

ただし、築古の実家の売却となった場合、契約不適合責任を負うことやその対策として瑕疵担保保険があることはきちんと理解しておくと良いでしょう。

次の記事では、買取業者に売却する場合の流れと、相続後に売却する場合の流れについて解説していきます。

実家の売却に関して、次の記事も合わせて参考にしてください。

本記事の監修

戸建買取再販事業部 事業部長森一也

鉄道を通じて地域の発展に貢献したいとの思いから、JR西日本に入社後、鉄道電気設備の維持・管理業務に携わる。
鉄道だけでなく幅広く地域の発展に貢献したいとの想いから、不動産の買取再販を行うこのびに参画。
鉄道業務で培った高い安全性・信頼性を自身の価値観とし、お客様との信頼関係構築を第一に、一人ひとりに寄り添った提案をすることを大切にしている。
このびでは営業・リフォーム・販売の経験を持ち、現在は事業統括・推進を行っている。
「このび」を通じてお客様に豊かな生活を提供することで、地域の発展に貢献したいと考えている。
子育て真っ盛りの1児の父。趣味はキャンプ。

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