中古住宅の買取について現在の市場を取り巻く環境や展望を解説

今回は、中古住宅の買取について解説していきます。これまで日本は、新築至上主義の思想が強く、新築の戸建てに住み一国一城の主となることが人生のゴールの一つという見方がありましたが、最近ではその思想も大きく変わり始めており、マンションのリノベーションや中古の戸建てのリノベーション等も多く見られるようになってきました。今回は中古住宅の買取について以下のような構成で解説していきます。

  • 中古住宅の買取市場を取り巻く環境について
  • 中古住宅を買い取ってもらう方法について
  • 実際の買取のプロセスについて

それでは早速中古住宅の買取市場を取り巻く環境について見ていきましょう。

中古住宅の買取市場を取り巻く環境について

冒頭でも申しました通り、中古住宅の買取市場については様々な変化が発生しております。具体的には以下の通りとなります。

  • 取引市場の概況について
  • 市場の将来展望について
  • 補助金について
  • 新築価格の高騰

ここからは、それぞれについて細かく解説していきます。

取引市場の概況について

中古住宅の買取再販市場規模の推移と予測は下の表の通りとなります。

参照:矢野経済研究所

不動産会社等が一旦購入し、リフォーム・リノベーションした後に販売する中古住宅買取再販は年々拡大しており、2022年の中古住宅買取再販市場規模(中古戸建及び中古マンションの買取再販戸数の合計)は成約戸数ベースで前年比5.1%増の41,000戸と推測されます。

市場拡大の主な要因は、中古住宅の需要増であると考えられております。特に、新築分譲マンションの価格は高騰・高止まりしており、新築と比較して相対的に割安な中古住宅の需要が増えています。なかでも、買取再販物件は、リフォーム・リノベーションが施され、新築同様に入居できるため、人気を博していることが市場の数字からも伺えます。

市場の将来展望について

2023年の中古住宅買取再販市場規模は前年比2.4%増の42,000戸と予測されています。更に今後についても、市場は拡大基調で推移する見込みで、2030年の中古住宅買取再販市場は2022年比22.0%増の50,000戸になると予測されています。

市場拡大の主な要因としては、住宅ローン金利については割安のため今後の上昇が見込まれているものの、それでも低金利を前提とした緩やかな上昇が見込まれることや、住宅取得時の税制優遇措置の継続など、良好な住宅取得環境が継続する見通しであるといった外部環境が挙げらています。

需給面については、割安で新築同様の住まいが実現する買取再販物件への需要は堅調に増加する見込みであるほか、築年数の経過とともにリフォーム・リノベーションを必要とする住宅ストック数は間違いなく増加していくことから、それに伴い、買取再販物件の供給は必然的に増加していくことも市場拡大の要因に挙げられると予測されます。

補助金について

日本全体として中古住宅の流通を促進させるために、様々な補助金制度があります。実際の制度としては各行政・市町村に確認が必要となりますが、主な補助金の例について解説していきます。なお、補助金制度は年度始めに発表されて、予算を使い切った時点で終了となるため、4〜9月までの上半期で申請をすることをお勧めします。

国が支援しているもの一例

住宅省エネ2023キャンペーン(国交省、経産省、環境省)
省エネ性能を有する住宅ストックの形成を図るために、住宅の省エネ改修等に対して国が支援する事業です。
参考:住宅省エネ2023キャンペーン

住宅エコリフォーム推進事業(国交省)
カーボンニュートラルの実現に向け、住宅ストックの省エネ化を推進するため、住宅をZEHレベルの高い省エネ性能へ改修する取組に対して、国が支援を行います。
参考:住宅エコリフォーム推進事業

長期優良住宅化リフォーム推進事業(国交省)
良質な住宅ストックの形成や、子育てしやすい生活環境の整備等を図るため、既存住宅の長寿命化や省エネ化等に資する性能向上リフォームや子育て世帯向け改修に対し、国が支援する事業です。
参考:長期優良住宅化リフォーム推進事業

他にも市区町村が主体となって進めている補助金事業として、以下のような補助金事業が挙げられます。

住宅•建築物安全ストック形成事業(国交省)
地震の際の住宅・建築物の倒壊等による被害の軽減を図るため、多くの地方自治体では、耐震診断・耐震改修に対する補助を実施しています。

介護保険法にもとづく住宅改修費の支給(厚労省)
介護保険においては、要支援及び要介護の認定を受けた方の一定の住宅改修(段差の解消や手すりの設置等)に対し、20万円まで(所得に応じて1割から3割自己負担)支給します。

このように、中古住宅の改修に当たっては国を挙げての補助があるため、これらの要因も後押しする形となって中古住宅市場が活況になっている背景があります。

新築価格の高騰

住宅関連の住宅地、戸建て住宅、マンションの不動産価格指数について過去15年間をまとめた表は以下の通りとなります。

参考:国土交通省 不動産価格指数(住宅)(令和4年10月分季節調整値)

この表は2010年の平均価格を100としたときのそれぞれの時点での価格を表したものです。表からわかる通り、緑のマンション(区分所有)の線が群を抜いて上がっていることがわかります。一方で、住宅地と戸建て住宅に関してはマンションほどは伸びていないことも分かります。つまり、マンションだけが異常なまでに価格が上昇しており、戸建て住宅に関しては物価の上昇と同程度で伸びているということが分かります。

購入する側のメリット・デメリット

ここでは購入する側のメリット・デメリットについて解説していきます。
メリットについては以下のような項目が挙げられます。


価格の魅力

中古住宅は新築住宅に比べて立地などが同条件の場合、価格が低いことが多く、予算に応じてより広い住宅や良い立地の物件を選ぶことが可能となります。


即時入居出来る

建築を待つ必要がなく、購入手続き完了後すぐに入居できることが一般的です。また、リノベーションやリフォームを行う場合であっても新築に比べて短期で終わることが多いです。

一方、デメリットとしては以下のような項目が挙げられます。

リフォーム・修繕費用が掛かる

物件によっては、古さや使用感に応じたリフォームや修繕が必要になる場合があり、追加の費用が別途かかることになります。


設備の古さ

リノベーションやリフォームを実施しない場合、水回りの設備や暖房システムなどが古い場合があり、快適性や省エネ性能に劣ることがあります。


耐震性の不安

築年数が古い物件、特に築40年を経過している物件では、耐震基準が現在よりも低かった時期に建築されていることがあり、耐震補強が必要になる場合があります。


販売時の価値

新築住宅と比べて価値が下がりやすく、将来的に売却する際に価値が下がっている可能性があります。金額の減少率としては以下のようなイメージです。

築年数売却価格
購入時100%
築10年経過50%
築20年経過25%
築30年以降5%

築30年を経過すると、建物に対して余程の工事をしていない限りはほとんど土地代だけしか残らないとイメージしておくと良いでしょう。

中古住宅を買い取ってもらう方法について

それではここからは中古住宅を買い取ってもらう方法について解説していきます。

具体的には以下の2つの方法があります。

  • 仲介経由で売却する場合
  • 買い取り業者に売却する場合

それぞれのメリット・デメリットをまとめた表は以下の通りとなります。

仲介経由で売却買い取り業者に売却
スピード感△買主を探すために情報を出しを続ける必要がある〇直接買い取るため別の買主を探す必要無
売却価格〇市場価格で売却できる△市場価格より安い金額で売却することになる
やり取りの煩雑さ△仲介とのやり取りに加えて内覧などを買主が来る毎に行う必要がある〇買い取り業者とのやり取りのみとなるため楽
確実性×売却できない可能性有〇直接買取

ここからは、それぞれについて細かく解説していきます。

仲介経由で売却する場合

仲介経由で中古住宅を売却する場合、不動産会社が売主と買い手の間を仲介し、売買契約の成立をサポートします。この方法の主な特徴と手順は以下の通りです。

市場価格での売却

不動産会社は市場調査を基に適正な売出価格を提案し、広範な販売ネットワークを通じて幅広い買い手を探します。

費用

成功報酬として売却価格の一定割合を仲介手数料として支払います。売却が成立しなければ手数料は発生しません。

時間がかかる場合がある

希望する価格で買い手を見つけるまでに時間がかかる場合がありますが、市場価格に見合った適切な価格での売却が期待できます。

買い取り業者に売却する場合

買い取り業者に中古住宅を売却する場合、不動産買取専門の業者が直接あなたの物件を買い取ります。この方法の主な特徴と手順は以下の通りです。

スピード売却

査定から契約、決済までが迅速に行われ、短期間で現金化できるため、急いで売却したい場合に適しています。


確実性

買い手を探す必要がないため、売却が成立するかどうかの不確実性がありません。即時買取を前提としているため、計画的に進めることができます。


価格が市場価格より低くなる可能性

買い取り業者は再販を前提としており、その利益やリスクを考慮した価格で買い取ります。そのため、市場価格よりも低価格での売却となることが一般的です。


手間が少ない

物件の広告や買い手との交渉が不要で、手続きがシンプルなため、売却に関わる手間が少なくなります。

中古住宅を少しでも高く売却する方法

最後に、中古住宅を少しでも高く売却する3つの方法について解説していきます。

  • 清掃や整理整頓を行い、内覧の際には可能な限りきれいな状態にしておく
  • 日ごろから住宅に対するメンテナンスを行っておく
  • 仲介だけでなく買取業者にも相談する

ここからは、それぞれについて解説していきます。

清掃や整理整頓を行い、内覧の際には可能な限りきれいな状態にしておく

売却の際には必ず買主が内覧に訪れます。その際に家がきれいな状態でないと買主に対して好印象を与えないため、整理整頓や清掃は必ずしておくようにしましょう。

日ごろから住宅に対するメンテナンスを行っておく

見た目の清掃は当たり前ですが、建物は日常のメンテナンスをどれだけ行っているかが中長期的に建物を利用する中では重要となります。例えば雑草などが生い茂って建物に覆われているような住宅は湿気が貯まるため、カビや腐食の原因となる可能性が多くあります。また、また、草の根が壁の隙間に入り込むことで、壁の構造自体を弱めることもあり得ます。見た目の問題だけでなく、建物の耐久性や安全性にも影響を与えるため、適切なメンテナンスが必要です。

仲介だけでなく買取業者にも相談する

売買に際して相談する相手は仲介業者だけではなく、買い取り業者に相談することも良いでしょう。仲介事業者の場合には数多く当たることに特化していますが、築古の戸建てなどに関しては一般の方では買い取るケースが少なく、専門の業者が買取リノベーションを行う場合の方が高く買い取ってくれる可能性もあります。

いかがでしたでしょうか。

中古住宅の市場は拡大傾向にあり、国としてのサポートに加えて新築価格の高騰やマンションの高騰などもあり、特に戸建ての中古住宅は売りやすい環境にあると言えるでしょう。

一方で、中古住宅を買う側のメリット・デメリットを理解することで、皆様が売却される物件にどのような特徴や強みがあるか理解が深まれば幸いです。

本記事の監修

戸建買取再販事業部 事業部長福田岳司

JR西日本に入社後、大阪駅での駅員を経て百貨店に出向し商売の基本と接客を学ぶ。その後三ノ宮駅の駅ビル開発計画推進を通じて不動産とまちづくりに従事。一度は海外で働きたいという想いからシンガポールに赴任。東南アジア各国で外国人向けJR西日本パスの販売を促進。現地法に基づく組織運営を学ぶ。帰国後はJR西日本イノベーションズ(現在)にて香港企業への出資や新規事業創出を担当。新規事業の第1号案件である「このび」を立上げたうえで事業統括・推進。自分も中古住宅をリノベーションした家に住む。
「このび」を通じてお客様に豊かな生活をコスパ良く提供したいと考えている。子育て真っ盛りの2児の父。趣味は演劇。

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